【アメリカのロースクール留学】その後のキャリア形成について、実体験でまとめ。
近年、小室圭さんで話題になっているアメリカのロースクール留学ですが、アメリカのロースクールを卒業するとどのようなキャリアを築いていくことができるのか、どのような可能性があるのかを、今回私自身の経験からまとめてみました。
ロールクールのプログラム、ロースクールの費用、合格までの道のりを解説していきます。
また米国弁護士の資格は、日本でどのようにいかせるのか、どのような就職先があるのかなど、実体験をもとにご紹介していきます。
ぜひこれからロースクールへの留学を検討されている方に、参考になれば幸いです。
目次
ロースクールのプログラムについて
アメリカのロースクールには主に2つのプログラムがあります。
一つは、「JD (ジェーディー)」と呼ばれるもので、JDとはJuris Doctors=法学博士のことをさします。
これは、原則としてアメリカの4大を出た学生が、弁護士資格の取得を目指すためのプログラムのことで、約3年かけて、基本的な法律の科目を中心に、興味のある選択科目を学んでいきます。
JDは在学中に法律事務所などで、インターンやアルバイトなどをして実務経験を学ぶ学生もいます。
もう一つは、「LL.M.(エルエルエム)」と呼ばれるもので、LL.M.とはMasters of Law=法学修士のことをさします。
基本的には自国で法学部を出た人や、弁護士や法曹界の人が専門的な分野を1年弱で学ぶプログラムです。
アメリカ人で専門性を高めたい場合にも選ばれるコースです。
「JD(ジェーディー)」プログラムについて
「JD(ジェーディー)」プログラムに入学するには、「LSAT (Law School Admission Test)= エルサット」という法科大学院入学適性試験を受ける必要があり、スコアによって出願できるロースクールが変わってきます。
英語が母国語ではない日本人がこの試験でハイスコアを取るのは、容易ではありません。
日本では「KAPLAN(カプラン)」などの予備校で、テスト対策のクラスなどがあり、出願手続きをサポートしてくれるサービスもあります。
また、「JD(ジェーディー)」プログラムは約3年間のプログラムなので、学費、生活費などを合わせると2,000万円ぐらい必要になることもしばしばです。(ちなみに小室圭さんはこちらの3年間のプログラムに通われているようです。)
「LL.M(エルエルエム)」プログラムについて
「LL.M(エルエルエム)」プログラムに入学するには、適性試験はなく、成績証明書やパーソナルステートメント、推薦状、TOEFLのスコアなどで総合的に判断されます。
「LL.M(エルエルエム)」プログラムには、自国で弁護士の資格を持っている人や、法学部卒のアメリカ国籍以外の外国人も多く、インターナショナルな人が多い印象です。
LL.Mの人数は、「JD(ジェーディー)」プログラムと比べるとかなり少ないので、学生同士の仲も深まりやすく、試験前などはノートをシェアしたりして助け合いながら、勉学に励んだりする雰囲気も見られます。
入学から卒業まで
ロースクールは入学してから、毎日膨大な量の判例を読んで予習することが求められます。
授業は、講義形式のものもあれば、教授と学生との間で問答が行われる双方向形式(いわゆる「ソクラティック・メソッド」)もあり、アメリカ人の生徒たちの中でディスカッションなどもしていかなければならないので、高度な英語力が求められます。
いずれのプログラムを選んでも、ロースクールを卒業後はまず司法試験合格を目指します。
アメリカは州ごとのライセンス制で、州によって受験資格が異なることもあります。
「LL.M(エルエルエム)」プログラムを修了した外国人のほとんどは、グローバルスタンダードで認知されている傾向にある、ニューヨーク州の司法試験を受ける方が多く、次に多いのはカリフォルニア州です。
いずれも、卒業後2、3ヶ月の猛勉強をして、合格を目指します。
司法試験は年に2回です。無事に合格した後は、「モラルキャラクター(人格や倫理性)」を確認する対面の面接があり、その後裁判所で宣誓式があります。
卒業後の実務経験とその実状
日本人を含め外国人は、ロースクールを卒業して弁護士に登録した後、学生ビザの延長で「OPT」というステイタスで1年間働くことができるので、それを利用して弁護士事務所などで実務経験を積む人もいます。
ただ、その後アメリカに滞在をして就労したい場合で、永住権や市民権がない場合は、就労ビザなど何らかのビザが必要になってきます。
今のご時世で就労ビザをサポートしてくれる雇用主を探して、厳しい条件をクリアして取得するのは、とても厳しい状況です。
訴訟大国と呼ばれるアメリカにおいて、弁護士の数は日本と比べると多いため、大手法律事務所に入り、競争に勝ち残り事務所のトップの「パートナー」弁護士になれるのは、アメリカ人でもほんの一握りです。
大手の法律事務所のパートナーになれれば、年収は3,000万円~5,000万ほどになることもあります。
英語が母国語ではない日本人が、アメリカの法廷で訴訟などに打ち勝つためには、よほどの自信と英語力がないと務まることができないハードな仕事です。
アメリカのロースクールに留学する大半の方は、日本で弁護士や裁判官であるケースが多いので、資格取得後、1年程実務を経験し、2年ぐらいで日本へ帰国するのが一般的です。
米国弁護士になった私の個人的なケース
運よくビザと仕事を手に入れてアメリカに残る方は少ないと思いますが、不可能ではありません。
私の場合、日本の法学部出身で日本での弁護士資格はありませんでしたが、「LL.M(エルエルエム)」プログラムを修了して、ニューヨークの弁護士資格を取得した後、ニューヨークの小さなLaw Office(ローオフィス)でインターンシップをしました。
運良く、カリフォルニアの法律事務所ではない不動産開発、投資を行っている会社に就労ビザをサポートして頂くことができました。(のちに会社を通して永住権も取得することができました。)
このように、法律事務所に入らなくとも、会社のリーガルカウンセルとして、法務部に入って経験を積むこともできます。
私はアメリカで弁護士資格を取得して10年後、日本に帰国することになり、日本で就職活動を経験しました。
アメリカで英語で仕事をしていた経験があることから、英語の契約書を解釈できたり、外国人の弁護士などとやり取りができたりとビジネスレベルの英語力を身につけていると、日系企業でも法務部・海外法務の部門を中心に幅広くニーズがあることを実感しています。
実際に、様々な会社から高評価、内定を複数頂くことができました。
リクルーターの方からも、このような経歴だと職に困ることはなさそうだというアドバイスもいただきました。
まとめ
ロースクールに卒業して、無事に米国弁護士の資格を取得できても、ビザや言語の問題でアメリカでの就職が厳しいことも事実です。
しかしアメリカのロースクール留学、実務経験や法律の知識を積むことで、日本での活躍の場は多方面にあり、これはとても嬉しいことでもあります。
アメリカでも、弁護士の資格を持っていて法律事務所以外で活躍されている方々はたくさんいます。
ロースクールで培った論理的思考や法律の知識は、必ずしも弁護士という仕事ではなくても、あらゆる業種での可能性を広げてくれることでしょう。
ここまでの道のりは決して安易なものではありませんでしたが、米国弁護士になった今、自分の人生の可能性が広がったと感じています。
※記事内容はレポート時点の情報になり、あくまでも個人的な見解、体験になりますので、予めご了承ください。